ソーラー税理士に教わる、太陽光の「消費税還付」メリットと注意点
ソーラー税理士こと鵜之沢さんに、太陽光融資の近況を伺った様子は前回記事にしましたが、その際、太陽光で活用できる「消費税還付」にも話が発展。制度利用の落とし穴など、貴重なお話が聞けたので、再び鵜之沢さんにご登場いただきます!
税理士法人ASC/株式会社エーエスシー
税理士 鵜之沢 巧
節税対策の提案材料として太陽光発電システムを扱っていたが、その高い投資利回りに注目し、2013年から自身も太陽光オーナーに。現在は個人として14基を保有。ソーラー税理士として実体験を踏まえながら、減価償却や消費税還付等の太陽光発電投資を有利に進めるためのアドバイスを行っている。
太陽光投資を考えたら、まずは2つの制度利用を検討しよう
個々人の置かれた状況によって利用しない方がメリットがあるケースもありますので、絶対とは断言できませんが、これから太陽光投資を始めるなら、以下2つの制度をチェックしておくと有利です。
(1)中小企業等経営強化法
【メリット】 3年間、固定資産税を半額にできる
【メリット】 日本政策金融公庫での基準金利を0.9%下げられる
中小企業等経営強化法に関しては以前コラムで取り上げましたので、詳細は上記リンク先より、それぞれご確認ください。
(2)消費税還付
【メリット】 100万円以上の還付金が手に入る可能性がある
本コラムは、この「消費税還付」に焦点を当てたインタビュー記事になります。
消費税還付を活用すれば、手元の資金が大幅に増える
− そもそも「消費税還付」とは、どのような仕組みでしょうか?
消費税は何かを購入すると発生しますが、あれは事業者が消費者から一時的に預かり、まとめて税務署に納めています。
しかし、事業者は消費税を預かるだけでなく、反対に仕入れなどで消費税を支払うこともありますから、それらのプラスマイナスを計算して差額を納税もしくは還付を受けられます。
つまり、事業活動において支払い過ぎた消費税は逆に返ってくることがあるのです。
分かりやすく例をあげましょう。
今年開業した八百屋さんが年間2,160万円(うち消費税160万円)を売上げ、その際の仕入額が1,080万円(うち消費税80万円)とすれば、消費税の関係は次のようになります。
売上2,160万円のうち、預かった消費税は160万円。
仕入1,080万円のうち、支払った消費税は80万円。
納税額は、預かった消費税(160万円)− 支払った消費税(80万円)=80万円
ただ、開業時の店舗づくりに1,620万円(うち消費税120万円)の設備投資をしていたら、納税計算は次のようになります。
預かった消費税(160万円)− 支払った消費税(80万円+120万円)= −40万円
この時、40万円が返ってきます。これが「消費税還付」の仕組みです。
− 消費税還付を太陽光投資で活用すると、具体的にいくらお得になりますか?
投資スケールによりますが、仮に2,160万円(うち消費税160万円)の低圧太陽光設備であれば、単純計算で100万円以上のメリットが生まれる可能性があります。
妥当なところで、売電収入を年間216万円(うち消費税16万円)にした場合、初年度の納税額は次のようになります。
預かった消費税(16万円)− 支払った消費税(160万円) = −144万円
初期投資がフルローンであれば、手元の資金が144万円増えるわけですから、とても有利です。
− 2年目以降は、消費税を納める一方ですか?
その点は注意が必要です。
消費税を納め続けると10年でマイナスになってしまいますので、納めるのは3年でストップしなければなりません。
逆に言うと、3年間は納めなければいけないルールがありますから、先ほどの簡易シミュレーションには2年目と3年目の納税分を加える必要があり、おおよそ100万円以上というわけです。
< 3年間の簡易シミュレーション >
預かった消費税(16万円×3年分)− 支払った消費税(160万円) = −112万円
消費税還付は、手続きのタイミングに注意が必要
− 手続きのタイミングを間違えると、還付金がもらえない可能性があるのですか?
はい。実際に時々、耳にします。
一番注意が必要な方は、現時点で何かしらの事業所得があり、免税事業者の個人・法人です。
消費税還付を受けるためには、第一に課税事業者である必要があります。
免税事業者から課税事業者に変更できるタイミングは一年に一度。「課税期間の初日の前日(個人事業主であれば年末)」までに、「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出することで、翌期から課税事業者に切り替わります。
届出を提出してもすぐ課税事業者にはなれませんので、太陽光設備の購入(引き渡し)は届出を提出した翌期(個人事業主であれば翌年1月1日以降)に設定する必要があるのです。提出した期は免税事業者ですから、還付は受けられません。
− 一般的なサラリーマンの場合は?
現時点で事業活動を行なっていない方は大丈夫です。新たに事業を開始する場合には、特例として提出日の属する課税期間から適用されます。
− 他に注意するべき落とし穴はありますか?
先ほど少し話に出た、3年目の手続きですね。
4年目以降の納税を止めるために、今度は課税事業者から免税事業者に戻る必要があります。この手続きは、3年目のうちに提出すればOKです。
ちなみに、売上(売電収入)が1000万円以上になると、免税事業者には戻れません。低圧太陽光の場合でしたら、1〜3基であれば大丈夫だと思いますが、4基目からは注意が必要です。
また、4基以上の投資規模になれば、会社を設立した運用の方が税制メリットが受けられる可能性が大きいです。
まとめ
− 2,000万円クラスの太陽光投資で、「中小企業等経営強化法」と「消費税還付」を上手に利用できれば、300万円近くもお得になるということですね?
うまく条件が合えば、そうなりますね。
しかし、制度利用が不利に働くケースも無いとは言い切れませんので、その点はご留意ください。
最後に、もう一つホットな話題を提供しますと、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」がさらにパワーアップします。
自治体によっては固定資産税が3年間ゼロになります。詳細は7月前後に発表予定ですが、今後ますます太陽光に投資しやすい環境が整うことは間違いないでしょう。
ただ、どの制度も誰もが利用できるわけではありません。私が言うとセールストークになってしまいますが、やはり専門家に依頼することがベター。太陽光投資は、太陽光業者と税制面の専門家が連携していると、設備の購入から運用に至るまでがスムーズですし、利回りの高い投資チャンスにも恵まれると思っています。
− ソーラー税理士 鵜之沢さん、貴重なお話をありがとうございました!
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