太陽光発電システムの頭脳、パワーコンディショナー(パワコン)とは?
パワーコンディショナー(略称:パワコン)の英語表記は、Power Conditioning System(略称:PCS)。読んで字のごとく、力を調整してくれる機器ですが、システムという言葉が入っているくらいパワーコンディショナーの機能は多彩。今回はパワーコンディショナーの基本的な役割を理解していくことを目的に、解説していきたいと思います。
パワーコンディショナー(パワコン)の役割とは?
太陽光パネルについて解説したコラムで触れましたが、太陽光パネルは太陽電池をつなげたもの。発電される電気は直流ですから、そのままの状態では交流が流れている電線(電力系統)には接続できません。
パワーコンディショナーの最大の役割は、太陽光パネルで発電した直流の電気を交流に変換すること。パワーコンディショナーの変換効率とは、どれくらいエネルギーのロスなく直流と交流を変換できるかという指標です。現在は94%〜96%の変換効率がメジャー。選べる余地があるなら、当然、高い方を選択しましょう。
なぜ、電線には交流を使用しているのか?
一般的に、電線には電気抵抗の小さい銅やアルミニウムが使われています。金や銀の方が導電率は良いのですが、とても高価で使用できません。銅やアルミニウムでも大きな電流を流せるように電線を太くすればいいのですが、日本中に張り巡らされた電線を太くするには莫大なお金が必要となり、それも難しい・・・。
そこで、電力会社に次のような考えが生まれます。
つまり、送配電設備のコストを抑えるために、電線には電圧の高い交流が使われているのです。
でも、日常的に使用しているパソコンやスマホ、テレビ、炊飯器、掃除機など、その多くは直流で動いているものばかり。家のコンセントまでは交流が届いているので、それをわざわざACアダプターで直流に変換したり、機器の中で変換してから使用しています。家にあるアダプターの数々を目にすると、本当に交流で運ぶのが効率的なのか?と少し考えてしまいます…。
電線に、高電圧の交流を使用している理論的補足
ここからは興味のない人は読み飛ばしてください。少しだけ中学生で習った電気の勉強をしてみます。まずは、直流と交流の主な特徴をおさらいから。
・直流:DC(Direct Current)
直流の特徴は、電圧が一定であること。例えば、単三乾電池なら常に1.5Vの電気が流れています。直流は電圧の上げ下げ(変圧)が困難です。
・交流:AC(Alternating Current)
交流の電圧は、プラスとマイナスを周期的に行ったり来たり変動しています。交流電圧は変圧がとても容易に行えるのが特徴です。
次に、電力の定義を確認します。
1Wの電力とは、1Vの電圧で、1Aの電流が流れた時のこと。電圧と電流の積が、電力です。公式で表すと次のようになります。
電力(W)=電圧(V)×電流(A)
【1】電圧50V、電流10Aの場合 | 【2】電圧500V、電流1Aの場合 |
---|---|
500W=50(V)×10(A) | 500W=500(V)×1(A) |
上記の【1】と【2】の電力は、どちらも500Wになります。もし電流を1/10に下げたいなら、電圧を10倍に上げればいいということですね。
さて次は、懐かしのオームの法則です。
電圧(V)=電流(A)×電気抵抗(Ω)
なぜオームの法則を引っ張り出したかというと、電気供給をする際には、ケーブルなどで必ず電気抵抗を受けて損失電力が発生するからです。どんな状況で、どれくらいの電力が損なわれるのかを計算してみましょう。
先ほどの電力を求める公式に、オームの法則を組み合わせると、電力を求める公式は次のようになります。ちなみに今回は抵抗を3(Ω)の一定として考えます。
電力(W)=電流(A)×電気抵抗(Ω)×電流(A)
【1】電流10A、抵抗3Ωの場合 | 【2】電流1A、抵抗3Ωの場合 |
---|---|
300W=10(A)×3(Ω)×10(A) | 3W=1(A)×3(Ω)×1(A) |
電流が小さい時の方が、損失電力が小さいことがわかります。送配電ロスを抑えるには電流を抑えるのがポイントなんです。
勉強はここまで。本編に戻りましょう。
電線には、低圧線(100/200V)と、高圧線(6600V)がある
電線に高電圧の交流が流れていることは確認しましたが、具体的に何ボルトの電圧が流れているのでしょう?
調べてみると、電力供給のスタート地点である発電所内の変電所では、27.5万〜50万ボルトまで昇圧して送電しているそうです。そこから段階的に電圧を下げていき、最終的に私たちが普段使用する電気を中継しているのは、よくご存知の電柱です。
通常、よく見かける電柱には高圧配電線(高圧線)と低圧配電線(低圧線)の2種類の電線が付いていて、上の方にある線が高圧線、下の方が低圧線。高圧線には6600V、低圧線には100/200Vの電圧が流れています。
高圧線と低圧線の間を取り持っているのが、トランスと呼ばれる変圧器。電柱に付いている大きなポリバケツです。高圧線(6600V)で遠くから運ばれてきた電力を、あのポリバケツ(変圧器)で、低圧線(100/200V)に流せるように降圧し、家庭や工場などに電気を届けているのです。
低圧(50kW未満)システムなら、パワーコンディショナーで低圧線に接続できる
太陽光投資で低圧案件が人気の背景には、低圧線(100/200V)に連系できる魅力があります。高圧線(6600V)に連系するためにはパワーコンディショナーでは役不足となり、キュービクルという数百万円する高額機器が必要になります。さらに、キュービクルを管理する電気主任技術者を選任する義務もあるため、資格を持っていない人は技術者を雇用しなければいけません。この連系費用の高さが、高圧案件に踏み込めない大きな理由と言われています。
※太陽光発電システムから電力系統に電気を流すことを、逆潮流(ぎゃくちょうりゅう)と言います。
まとめ
ここでひとまず、低圧(50kW未満)太陽光発電システムにおけるパワーコンディショナーの基本的な役割についてまとめておきます。
パワーコンディショナーは、太陽光パネルで発電した直流の電気を交流に変換し、電圧を調整して低圧線(100/200V)に電気を流す役割を担っている。
この基本的な役割に加えて、パワーコンディショナーは他にも多彩な機能があります。2つだけご紹介しておきます。
一番有利な点を判断してくれる、最大電力点追従制御(MPPT)機能
電力は電圧と電流の積で決まります。
太陽光パネルの電流と電圧は一定ではなく、日射量や温度などの気象条件によって刻々と変化します。最大電力点追従制御(MPPT)機能が付いているパワーコンディショナーは、電力(電流と電圧の積)が最大になるように、最適な電流と電圧の値を自動決定してくれます。もし、パワーコンディショナーを購入する時は、最大電力点追従制御(MPPT)機能の有無はチェックしておきたい項目です。
※MPPT:Maximum Power Point Tracking
系統電力で停電があれば、自動でストップしてくれる
何かしらの理由で、系統電力が停電になった時には、パワーコンディショナーは停電を感知して逆潮流を自動ストップする機能を持っています。電線の保守・点検のために一時的に停電させていたつもりが、太陽光発電システムから電気が流れ込んでいた!なんていうトラブルが起きないためです。
パワーコンディショナーに関しては、まだ解説したいポイントがあるのですが、それはまた今度。基本編はここまでです。
リスクの少ないパワーコンディショナーを選ぼう
最後に、低圧太陽光発電システムのパワコン選びのポイントを3つだけ。
1. 故障しにくいパワーコンディショナーを選ぼう
近年では海外メーカーの製品も品質が高くなっていることは事実だと思いますが、やはり国内メーカーがお薦め。低圧の太陽光発電システムに特化したパワコンを開発しているメーカーであれば安心できます。
2. 長期保証のパワーコンディショナーを選ぼう
当然、保証は長い方が良いです。比べる物差しとしては、「10年保証」が一つの目安。10年あったら、合格ラインだと思います。
3. 出力容量の小さいパワーコンディショナーを選ぼう
太陽光発電システムには、複数台のパワコンが付いていますが、大容量のパワコンで台数を減らすのはリスクが高くなる場合があります。
仮に50kWのシステムだとします。
出力容量が5kWのパワコンを10台設置するのと、出力容量10kWを5台設置するのでは、前者の方がリスクは低いということです。万が一、パワコンが故障した際に、5kWを失うか、10kWを失うか。メガソーラーであれば5kW程度は小さい差ですが、低圧太陽光発電システムでは、5kWの差は大きいです。
低リスクのパワコン選びで、ハイリターンを目指しましょう!
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